鳥のクリッカートレーニングの基本と要点



クリッカーとは動物のトレーニングに使う道具で、手のひらに収まるサイズのプラスチックの枠に小さなボタンが付いており、押すと「カチッ!」という歯切れの良い音(クリック音)が鳴ります。

もともとは哺乳類の躾に使われていたようですが、現在は鳥類のトレーニング用としてもポピュラーです。

動物の躾・トレーニングで最も簡単で効率的な方法は、うまくできた時にご褒美を与えることだと思われますが、クリッカーを使ったトレーニングでは、鳥がトレーニング中の芸や躾をうまくできた時に、まずクリッカーをカチッと鳴らしてからご褒美を与えます。

クリッカーでインコに教えることができる躾や芸はたくさんあり、応用できる可能性を考えれば無数にあると言えます。

すでに検索すればたくさんのサイトや動画に紹介されていると思われるので、このページではトレーニングの一例を挙げ、クリッカーの基本的な使い方と、経験上自分が感じたポイントをシェアしたいと思います。


クリッカートレーニングの例

インコの名前を呼ぶと返事をするように躾けるトレーニング


これはうちのセキセインコに試したもので、比較的簡単で楽しいトレーニングになりました。

飼育本やサイト、ユーチューブなどで見かけないので、ここで紹介したいと思います。


片手にインコを乗せて、もう片方の手にクリッカーとご褒美を用意しておきます。

クリッカーのボタンは親指で押すので、ご褒美は手のひらにいっしょに持つことができます。

ご褒美は好きなおやつでもよく、食事前ならいつも主食にしているものでもOKです。


インコの顔を見て、名前を呼びます。

反応がない場合は、少し間をおいてからもう一度名前を呼びます。

何度か繰り返しているうちに、たとえ小さな声でも返事をしたら、その直後にクリッカーを鳴らして、ご褒美を与えます。


クリッカーを鳴らしたら、ご褒美をあげるまでに長い間が空いてはいけません。クリッカーがカチッと鳴ったら、1秒か長くても2秒以内にご褒美を与えます。

これを数度繰り返すとインコは何をすればいいか理解して、名前を呼ぶと元気よく返事をするようになります。


セキセイインコのジャンゴ、クリッカートレーニングで手に乗せて名前を呼ぶと返事をするようになる


このトレーニングはインコを手に乗せなくても、止まり木やケージ越しに行っても同じですが、距離が近い方がクリッカーを鳴らしてご褒美を与えるまでのタイミングに、ロスが少なくやりやすくなります。


クリッカートレーニングのポイント

  • 無理強いをしない、急かさない、飽きたら止める
  • 鳥が理解するまで忍耐強く待つ
  • クリックとご褒美をスムーズに行う
  • ご褒美はクリッカーを鳴らした後にだけ鳥に見えるようにする

大事なことは飼い主が、インコにとってクリッカーのカチッという音は、「合格!」という合図であり、またご褒美=報酬がもらえることの保証であることをて忘れないことです。

これは、練習中の行動を正しく行えば、必ず約束された報酬を渡すというインコとの契約です。

なのであなたが教えたいことをインコがうまくできた時に、クリッカーを鳴らすタイミング、クリッカーを鳴らした後に餌を与えるまでのタイミングが重要で、もたつくと鳥が戸惑ったり、失望やいらいらを感じて、トレーニングに対して負のイメージを持ってしまいます。

また報酬への保証であるからには、もし途中でインコが満腹になりご褒美に興味を示さなくなったときも、クリッカーを鳴らしたからにはご褒美を差し出さなければなりません。


もう一つ大事なポイントは、鳥がトレーニングをしたがらないときは無理強いしない、意欲的にトレーニングを始めても飽きてきたらすぐにやめることです。

またトレーニングの最中に毛づくろいを始めた時などは、急かさずに待ってやります。

これも同様にインコにトレーニングは楽しいことというポジティブな気持ちを持たせるためで、一度ネガティブなイメージを持ってしまうとそれを払拭するのは困難なので、基本は鳥のペースにこちらが合わせるようにします。

これも鳥が要領を掴み、楽しいと感じ出したらどんどん意欲的になり、鳥の方がこちらを急かすようになります。


トレーニングの種類によっては、鳥にしてほしい行動を飼い主がある程度促すことができるものもありますが、最初は鳥が自発的(飼い主にとっては偶然的)に行動するまで待つものが多いので、最初の数回、鳥がそれを飼い主=トレーナーが望んでいることを理解するまでに忍耐が必要な場合が多くなります。

例えば上記の”名前を呼ぶと返事をする”ようにするための躾も、普段から返事をしたり、しなかったりという鳥なら、さほど時間もかからずにマスターできますが、名前を呼んでもめったに返事をしない鳥なら返事をするまで忍耐強くこちらが待たなくてはなりません。

しかし数回の成功で鳥が、クリッカーの音=合格=成功報酬への保証ということを理解すればその後は学習への意欲と速さが驚異的に増します。