数年前インコのフリーフライトについて検索していると、「うちのインコにはフリーフライトは無理だから、せめてバードランで運動させて~」というようなブログがあった。

「バードラン」という言葉を知らなかったので、「バードランてドッグランの鳥バージョン?、だったらバードランじゃなくてバードフライトじゃないの?」と思いながら検索してみた。

そして出てきた画像を見ての第一印象は、「なんだこれ?」だった。

やはり ”バードラン” が正解か、むしろ ”バードウォーク” かも知れない。

テーマパークのようにサバンナやジャングルのムードを再現してあるのかと思っていたら、ジャングルどころかビルの中の普通のオフィスのような四角四面の空間で、木や草もなく、綱と人工的なバードアスレチックが設置してある施設だった。

一般家庭の平均的な部屋よりは大きいが、自由に飛べるというほどの空間ではない。

セキセイインコのジャンゴ、草の根っこを土ごと齧るのが好き

考えてみると、そこまで投資しても見合わないだろうし、仮に採算が取れたとしても、みんなで使える鳥のための施設というのは難しい。

幅を広くしたり天井を高くすると、終業時間になっても逃げ回ったり、降りてこなくなる鳥がいるだろう。

内装を複雑にして目が届かないうちに事故が起こると管理責任を問われたりもするし、結局は人の都合を取るとこうならざるを得ないのか。

ウロコインコのポップ、庭でフリーフライト

とはいえ、確かに毎日4畳半のスペースでしか遊べない鳥たちにとっては1メートルでも飛距離が延びることはメリットだし、いつもと違う場所で飛べることや他所の鳥と交流することは刺激になる。

日常変化のない鳥にとってはやはり楽しみとなるだろう。

その場所を提供する人や手間や時間を掛けてそこへ愛鳥を連れていく飼い主の心も鳥に通じれば、きっとそれもプラスになる。

セキセイインコのステファン、可愛がって育てたのに気が向いた時にしか手に乗ってくれない


さて、そう思ってからだいぶ時が経ったある時、ツイッターで ”鳥をケージに入れていっしょに散歩するためのマニュアル” みたいな投稿がシェアされていて、それに意外なことが書いてあった。

それは、

  • 外で雑菌に触れたり、暑すぎたり寒すぎたりして病気になってはいけないので、1歳までは外に出さないこと

としてあり、その根拠としてどこかのバードランも一歳未満のインコは入場禁止になっていると書いてあった。

ワカケホンセイインコとジュズカケバト(ギンバト)のカップル、アビアリーのハンモック

これにはため息が出た。

玄関を出る前にスマホを見れば、その日が鳥が体調を崩すほど暑いか寒いかくらいか分かるし、ケージに入った鳥が命に関わるほどの恐ろしい菌に触れる確率がいったいどれくらいあるのか?

生後一年間は鳥の心身の発達に最も重要な時期で、野鳥なら生きるために必要なことの大半を学び、身に付ける。

鳥の生涯の中で飛ぶことへの執着がもっとも強く、外の世界への好奇心に満ち溢れている。

この時期だからこそ外の空気の中、いろんな景色や音に触れさせたり、他の鳥と交流させたり、少しでも広い場所で飛ばし、遊ばせてやり、学ばせてやりたい。


フリーフライト中のオキナインコ

逆にこの時期を、飛ぶこともせず変化も刺激もない、ただ四角い小さな潔癖空間で過ごすとどうなるか?

ケージに入れての散歩や施設の中の放鳥まで禁止して、どんな対価が得られるというのだろう?

当然、脳も体も幼稚な子供のまま発達せず、病気に対して免疫も持たない弱い鳥になってしまう。

犬に置き換えると絶対に許されないような飼い方が、どうして鳥に対してはさも常識のように続けられるのだろうか?

こういう考えが主流のうちは、まだまだ日本ではフリーフライトどころではないのが分かる。

首をかしげるウロコインコ

追記: 

木もなく土もなく風もなく、普通のオフィス用の空間に人工的なバードアスレチックを置いたところで自宅の放鳥との違いと言えば、少しだけ広く家具がないということくらいしかない。

もし私がバードランを作るとしたらせめて鉢植えの植木やプランターの草を置く。それがかなわないなら天井や壁紙を木の写真を使うなど、見た目だけでも鳥たちが本来住んでいる環境を再現しようとするだろう。

そのことが大事という発想はフリーフライヤーだけだろうか?